診療だより・いきいき老人だより合併号

       − 高齢者の運動器機能向上について −

瀧田医院本院・分院・シニアプラザ  平成18年1月発信



 加齢とともにほとんど全ての高齢者が介護を必要となるかのような誤解もあるようですが、実際には高齢者の75%は介護を必要としないだけではなく、壮年者と同じように社会活動も積極的に営んでいますし、こうした高齢者は年々増加してきています。
 しかし、現在積極的な介護は必要とはしないが、これから積極的な介護を受けねばならなくなる可能性がある、いわゆる「介護予防対象者−要支援者」が多いことも事実です。
 この観点から、4月よりの介護保険制度の改定の中で「介護予防」が加わり、その一つに「運動器機能向上」が採り上げられました。
 『高齢者に高負荷の筋力トレーニングはダメ!』
 これまではそれほどの根拠もなしにそう信じられてきました。しかし、高齢者であっても高負荷のトレーニングは可能で、しかもその効果は顕著、との報告があります。
 尚、寝たきりになれば、QOL(生活の質)が大きく損なわれることは明白です。
 したがって、高齢者の自立した生活を維持・向上するために、「運動器機能向上」は必要なものです。
 確かに、どのような運動であっても危険性はあるので、運動をしても良いか否かは「効果」と「危険性」をハカリにかけて判断されるべきです。
 また、「運動器機能向上」の対象となる高齢者も安心して運動できる環境づくりが必要となってきます。
 なお、高齢者は慢性的な運動器機能障害を抱えている場合が多いので、それぞれの状況にあった個別の運動プログラムを提供することが大切です。

介護予防運動指導員 マッサージ師 角皆勝哉(つのがいかつや)

< 運動の進め方 >
1.コンディショニング期

運動への意欲を高めることを主な目的として軽い筋力トレーニング(軽いと感じる強度で20〜30回を1〜2回反復)を行ない、以後のトレーニングに耐えられる体力づくりも目指します。

2.筋力増強期

高負荷・低反復(強く、そして回数は少なく)の筋力増強トレーニングで、筋力の向上を図ります。バランストレーニングなど徐々に機能的な運動を加えて行きます。運動のスムーズさなどもしっかりと確認して常に最適な運動を目指します。

3.機能的トレーニング期

高負荷筋力増強トレーニングを続けながら、速くて複雑な動作などの機能的なトレーニングも併せて実施します。この時期は運動継続への大事な時期でもあり、対象者が日常で困難と感じる動作、これが出来れば良いなと感じている動作を、達成可能ないくつかの要素に分けて段階的に行ないます。

機器による筋力増強トレーニングの一例