診療だより

      2号

瀧田医院分院  平成15年11月発信


秋も深まって参りました。
瀧田医院分院では、8月に痴呆についての勉強会を開催しました。
高齢者の方が増え、それに伴い、痴呆と診断される方も数少なくありません。
病気を正しく理解し、痴呆であっても、幸せに生きられるよう、又、周りがその人を
暖かい気持ちで受け入れられるよう願っております。

 1. 痴呆とは?
老化による単なる物忘れとは違います。原因はいろいろありますが、痴呆とは、
「脳や身体の故障が原因で、記憶や判断力などの障害がおこり、社会生活に
支障があること」を言います。

 2.単なる物忘れと痴呆の物忘れの違い

単なる物忘れ 痴呆の物忘れ
記憶 ● 置き忘れ

● 食事の内容を忘れることがある
● 内容の全てを忘れてしまう

● 食べたことを忘れる
見当職 ● 人の名前が出てこない

● 場所がわかる

● 月日はわかる
● 人の顔を忘れてしまう

● 場所がわからない

● 月日がわからない
判断力
計算
● 判断ができる

● 計算はできる
● 判断ができない

● 計算はできない

 3.主な症状
中核症状と随伴症状があります。下記に示す症状です。

主な中核症状


主な随伴症状

 4.治療について
(1)薬物療法
症状の進行を抑制する薬剤や、他の症状に応じた薬剤があります。
主治医へ御相談ください。

(2)介護者・家族の対応
痴呆の治療は、薬物療法だけでは成り立ちません。それと共に、デイケア・デイサービスなど公共のサービスを利用して、残っている身体的、精神的な機能をなるべく長く維持することも必要になってきます。又、ご家族や、介護の方がどのように接するかということも非常に重要になってきます。

<接し方のポイント>
症 状 接し方のポイント
(ア)物忘れ 話題を変え、「忘れる」ことを利用する。
(イ)妄想 同じ感情を共有して、味方になる。
(例)財布を盗まれた。
   「それは困りましたね。一緒に探しましょう。」
(ウ)見当識障害    同じ立場になり、不安を取り除く。
(例)今日は何日?
   カレンダーを見ながら、「あゝ今日は○○日なのね。」と一緒に納得する。
(エ)人物誤認 否定しないで、まず受け入れる。
(例)あなたはどなたですか?
   人違いであれば、その人になりきる。
   タイミングをみて、一度姿を消し、「ただいま帰りました○○です。」
   といって、認識してもらうなどする。
(オ)徘徊 高齢者の安全を守るネットワークづくり。(地域全体のとり組み)
(例)帰り道がわからなくなる。
   住所・名前・電話番号などかいた名札を着衣につけたり、
   首からぶらさげたり、工夫する。
(カ)幻覚 説得よりも、まず安心感を抱かせる。
(例)どろぼうが狙っている。
   「何もいないじゃない。」と否定するのではなく、
   「私がいるから大丈夫。」と安心感を与える。
(キ)性格変化
怒りっぽくなる
上手に話題をかえながら、注意を別の方向にもっていく。
介護者が冷静になって対応する。
(ク)問題行動
便など失禁
厳しく叱責することは逆効果。
(ケ)夜間せん妄
夜歩き出して
ウロウロしたりする
無理やり静かにさせたりせず、気が紛れるよう、他のへやに誘ったり、
お茶をのんだりしてみる。
(コ)異食
食品でない物を
食べようとする
回や手の届かないところにおく。おかしや果物など用意し、
食品でないものから気をそらす。