治療院たより      H21年12月発信

●鍼灸のいろいろな治療法


東洋医学では、西洋医学とは異なった観点から人間の身体をとらえています。

 人間の身体には「経絡」というルートがあり、ここを気というエネルギーが流れて、全身を循環しています。この気の流れが順調であれば健康でいられますが、何らかの原因により、気の流れが滞ったときに病気になります。そして滞った流れを、鍼灸を使った刺激によって正常にすると、身体は健康な状態に回復して行くということが東洋医学の理論です。

 このような考えの下、痛みや筋肉のコリの部分がどの「経絡」と関係があるかを見極め、その「経絡」に鍼や灸をします。このために患部から遠く離れたツボを使うこともあり、一見すると症状とは関係がなさそうですが、東洋医学の理論上では患部に深く関係したところであり、その結果患部を直接触らなくても、気の流れが整い、痛みが改善し、筋肉のコリも緩みます。

 さて、この気の流れというものを、西洋医学に当てはめると、さしずめ血の巡り、血行ということになるのではないでしょうか。

 血液の循環によって、酸素や栄養分、あるいは温度(体温)までも、身体のすみずみまで運ばれ、また老廃物や炭酸ガス等の不要なものが回収されています。したがって血流が滞ると、身体に必要なものが末梢まで行き渡らなくなったり、老廃物が貯まったりして、痛み、シビレ、冷え、その他いろいろな不都合が生じます。

 そして、鍼灸によって「気」の流れが整って体調が良くなったときには、血行もまた良くなっています。

 この血行の改善という観点で鍼灸治療を考えると、痛みの局所や筋肉のコリの部分に直接鍼や灸をすることもまた有効な方法です。

 筋肉のコリの部分に鍼をして、場合によっては電気を流す等もおこない、その機械的刺激によって局所の筋肉を緩め、血行を促進します。

 この点ではマッサージも効果的です。筋肉のコリをもみほぐすことによって、同様に筋肉を緩め、血行を促進します。

 人体にある血管の内、8090%は毛細血管です。この毛細血管は非常に細いために老廃物が貯まり易く、とくに手足の末端等は微小循環障害を起こし易いのですが、手足の指先等のツボに鍼をして、流れが悪くなっている血液を数滴出血させてやることで、滞っていた血行が改善されると考えられています。ちょうど、川にゴミが貯まって水の流れが悪くなっている場合に、そのゴミを取り除いてやるようなものです。これを「刺絡」といいます。

 このように、一口に鍼灸といっても、その使い方にはいろいろあり、その人その人に合った方法を選択して、施術をおこなって行きます。